自分の一族は比較的仲が良いから大丈夫という理由で、“相続”を安易に考えてしまってはいませんか?実際に相続が発生すると、遺言書の確認や相続人の確認、遺産分割協議、納税に関する書類の作成・申告・納税などを経てやっと手続きが完了します。そして場合によっては仲が良いと思っていた遺族の間で相続に関するトラブルが発生し、調停・訴訟まで発展することもあるのです。

ではそのようなトラブルを避けるためにも、あなたの身の回りに相続が発生した場合、どの様な対処をするのが良いのでしょう。

本記事では、相続発生時の流れと相続前に準備しておきたいことをわかりやすくご紹介していきます。

“相続”でパニックを起こさないためのポイント

大切なご家族が亡くなった後、その悲しみに暮れる暇もなく通夜と葬儀の手配に追われ、なんとか一段落……やっと一息付くことが出来た頃、ふと位牌を胸にすると、亡くなったご家族との想い出ががこみ上げてきます。

ですが、ちょっと待って下さい。大切な“相続”の手続きを忘れていませんか?実は相続には遺言書の確認や相続の承認、遺産分割協議、相続税の申告と納付など、数多くの手続きを踏まなくてはなりません。まずは、相続を開始しなければならなくなった時に慌てないように、相続全体の流れをチェックしておきましょう。

【相続の全体の流れ】


相続人調査

相続の手続きを円滑に進めるためには、まず死亡した人(被相続人)の財産を受け継ぐ権利を持つ相続人を確実に調査・把握しなければなりません。この時に、もし相続発生時に有効な遺言書が存在する場合は、遺言書に記載されている人物が相続人となります。しかし遺言書がない場合は、まず戸籍謄本等によって相続人を調査し、相続関係説明図を作成する必要があります。

また親族が認知していない相続人が出て来る事もるので、このような予期せぬトラブルを回避するためには、より確実な調査を行う必要があります。

相続財産の調査・把握

相続財産の調査・把握は遺産分割協議をスムーズに進めるために大切なことです。相続人が複数いる場合などには、遺産分割に関して揉めないようにするため、正の財産と負の財産をしっかりと把握しておくようにしましょう。

相続の承認方法の決定

相続の承認方法は、単純承認・限定承認・相続放棄と3つの方法をとる事ができます。予期せぬ、負の財産を相続人が被らないようにするために確実な財産調査をし、承認方法を選択する事が大切です。

遺産分割協議書の作成

相続の話し合いが相続人同士でまとまった場合、次に遺産分割協議書の作成に取り掛かる事になります。この際に、記入漏れや虚偽、錯誤があると、土地や建物などの不動産財産の名義変更が出来ないだけでなく、遺産分割協議自体が“無効”となることがあるので注意が必要です。

財産の受け継ぎ

相続財産に土地や建物がある場合、その所有権の移転手続きが必要となってきます。相続登記は自分自身でも行うことが出来ますが、正しい相続登記の知識を有していない場合、本来納める以上に税金を納付してしまったり、記載ミスなどから予想外のトラブルを招いたりする事もあるため、税理士などの専門家に依頼し、確実に所有権の移転を完了させる事が望ましいでしょう。

また、相続財産の中に銀行預金がある場合、まず死亡した人(被相続人)の銀行口座を解約し、その後、法定相続人の口座に遺産分割協議で決まった金額が振り込まれることになります。この場合、ほとんどの銀行において遺産分割協議を終えている事が、死亡した人(被相続人)の銀行口座を解約する条件となっています。

そのため、遺産分割協議に望む相続人の一人が、勝手に法定相続の一部分だけ銀行口座の解約手続きをする事は出来ないと覚えておくと良いでしょう。

相続税の申告

遺産分割協議を終えて相続財産の金額が確定したら、今度は相続税の申告を忘れずに行いましょう。この相続税の申告・納付には期限があり、相続が発生した日の翌日から10か月以内となっています。この時、納税が遅れると“延滞税”がかかるため注意が必要です。

相続発生時に気をつけておきたいこと


的確な節税対策をする

相続財産の調査を正確にし、財産の評価額を正しく把握することは大切です。相続発生時には、各々の相続人に適応される可能性のある特例が多数存在します。例えば相続財産の中でも、建物や土地が占める価値の割合は非常に高く、的確な節税をすることで大幅に税金を抑えることができる可能性があります。

これらの節税に関する計算には難しい手順を踏むものが多いためトラブルを防止する意味でも、まずは相続の専門家に相談し、確実な対策をとることが望ましいでしょう。

遺産分割協議においては揉めないことが大切

遺産分割で揉めてしまう原因としては、受け継ぐ相続財産の割合やその種類によって発生するものが多いようです。

また、相続人同士の間で、「財産を隠しているのでないか……」「生前の約束と話が違う……」などといった不信感が一度生まれてしまうと、遺産分割協議の長期化、そして調停や訴訟に発展してしまう可能性もあるのです。このように訴訟まで発展してしまうと、遺産分割協議を終えた後の親族関係に亀裂が生まれることがあるため、可能な限り揉め事を避けるようにし、スムーズな遺産分割協議を目指すことが大切です。

この時、円滑に相続を進めるためには、トラブルの発生を避けるためにも弁護士などの仲裁役に入ってもらい、相続人同士で話し合う事柄を整理し、遺産分割の方向性を互いに確認し合うことが重要となります。

相続に関する各種申告期限にも気をつけよう【ポイント解説】


死亡届(7日以内)

死亡届は、亡くなった人(被相続人)の死亡を知った日から7日以内(国外にいる場合は3カ月以内)に、市区町村の戸籍・住民登録窓口に届けをする必要があります。

相続放棄及び相続限定承認・単純承認の申告期限(3ヶ月以内)

相続においては、その相続の承認方法が3つ有ります。これらは全て、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申告が必要とされているので気を付けるようにしましょう。

①単純承認

死亡した人(被相続人)の正の財産と負の財産を全て受け継ぐ方法が単純承認です。単純承認を選択すると、死亡した人(被相続人)に借金などがあった場合、それらも受け継いでしまいます。また、その他の承認(相続放棄・相続限定承認)の申告をする前に、相続人が相続財産の全部もしくは一部を勝手に売却・処分した場合、単純承認したとみなされるので注意が必要です。

※重要3ヶ月以内に相続放棄や相続限定承認の手続きをしない場合、“単純承認”をしたとみなされてしまいます。

②相続放棄

相続放棄は、相続人が相続を全て放棄することです。この手続により、全ての正の財産だけでなく負の財産も放棄することができます。つまり死亡した人(被相続人)に多額の借金がある場合は、相続放棄をすることで、借金を相続する心配が無くなります。

相続放棄の手続きは、相続人が“単独”で行うことができ、特に理由を申述書に添える必要もありません。相続放棄を申告する際は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出します。また、“生前”に相続放棄をすることはできないとされているので覚えておくと良いでしょう。

③相続限定承認

相続限定承認の手続きをした場合、相続人が死亡した人(被相続人)から受け継いだ財産の範囲でのみ、負の財産(債務)を支払う義務を負います。

もし債務の範囲が限定相続した資産を超えてしまった時でも、相続人の財産から支払う必要はなくなります。相続限定承認を申告する際は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に、相続人が全員で家庭裁判所へ限定承認申述書を提出しなければなりません。

死亡した人(被相続人)に課せられる所得税の確定申告(4ヶ月以内)

この手続は“準確定申告”と呼ばれます。通常、所得税は課税される年の所得額から税額を算出し、その翌年の3月15日までに税務署に申告・納税をすることになっています。しかし年の途中で死亡した人(被相続人)の場合は、自身で税金を納める事が出来ません。

そのため代わりに相続人が、課税される年の1月1日から死亡した日までに、死亡した人(被相続人)が得た所得額から税額を算出し、申告・納税を行うことになります。この場合、相続人が相続開始を知った日の翌日から4か月以内に申告・納税をしなければなりません。

相続人に課せられる相続税の申告・納付(10ヶ月以内)

相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、死亡した人(被相続人)の死亡時の住所地を管轄する税務所へ出向き、申告・納税をしなければなりません。従って、相続人が北海道、愛知県に住所があったとしても、死亡した人の住所が東京である場合は、全員が東京で相続税の申告・納付をすることになります。納税の際は、現金による一括納付が原則とされていますが、それが困難な場合、延納や物納を選択することもできます。

尚、相続税の申告書に関しては連名によって一部を作成すればよく、相続人全員の署名と押印により提出可能となっています。

遺留分の減殺請求(1年以内)

遺留分とは、本来の相続人が当然に受け継ぐはずの一定割合の部分のことを指します。もし遺言書などによって、民法に定められた遺留分が侵害された場合、遺留分減殺請求という方法で、自分の遺留分を相手から取り返す事ができます。この遺留分減殺請求の手続きは、その遺留分の侵害を知った日から1年以内に行使することで有効になります。また遺留分が侵されたことに気付かなかった場合、遺留分の権利は相続開始から10年で時効により消滅します。

相続税の特例適用のための分割期限(3年10ヶ月以内)

相続税の申告期限までに遺産分割が行われていない場合、“小規模宅地等の課税価格の特例”や“配偶者の税額軽減の特例”の適用を受けることができません。その場合、相続税の申告時にはこれら分割の行われていない財産に関して特例の適用を受けることはできませんが、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)から計算して3年以内に相続の分割が行われ“更正の請求”をした場合、各種特例を受けることができます。

この場合、分割が行われた日の翌日から4か月以内に、相続税の各種特例に関する“更正の請求”をする必要があるので注意しましょう。


まとめ

いかがでしたか?

相続発生時には、数多くの相続に関する手続きや届け出を行わなければなりません。相続手続きに関して、自分一人で全て行おうとすると混乱してしまい、予期せぬミスを起こしやすくなってしまいます。

まずは申告期限が近いものから確実に手続きを済ませるように心掛けましょう。